私が歌い始めて10年ちょっとになる。
同情を買いたいわけでもないのでプレーンなエピソードとして受け止めていただきたく記すのだが、私が歌い始めた時はそれはそれは悲壮感に溢れており、ひどい状況だった。
逃げ道のように歌い始めた歌だったが、その悲壮感をそのまま出すということに抵抗を感じるという妙な冷静さもあり、そういうものはできるだけ抑え、歌詞の中に自分だけにわかる暗号のように気持ちを消化する形で「藤子」という名前で活動を始めた。
体は常に重く横になっているだけでもわけのわからない焦燥感に駆られて冷や汗をかきながら浅い眠りを繰り返すような毎日だった。それを人前でできるだけ出さないように気をはっていたので家に帰るとそのまま倒れこむような状態だった。自分がやっているものが音楽として成立しているのか、他人から受け入れられるものなのかも冷静に判断することもできなかった。けれど、不思議なことに音楽を始めたことがきっかけで、その時々、自分を救ってくれる不思議な出会いが連鎖するようになった。(これはありがたいことに、10年経った今でも継続中である。)
音楽を始めて1年半ほど経った頃だろうか。なんとなく自分の歌の幅を広げたい気持ちや、暗いものをそのままどん底に暗い形で外に出したい気持ち、自分の好きなものではなく自分に合っていることを探りたい気持ち、そんなことから「藤子」とは別名義の「フジコ」というのをはじめた。予想を上回りそれまでよりもさらに人との関わりを広げることになった。暗さは暗さを呼ぶ。その暗さは、暗さに対して親和性のない人からは近づきがたさや抵抗感を持たれているだろうという自覚はある。(実際私のあまりの悲愴っぷりに共演者の人に演奏終了後「大丈夫か?」と声をかけられたこともあった。)しかしその時の自分はまだまだ救われる必要があったし、少数の引き合う人たちとの交流で少しずつ癒されていった。
2011年には音源も作ったし、それを持ち歩いて名古屋や長野にも行かせてもらった。
明後日共演させていただくICHIさんともそんな中出会った共演者の一人だった。
正直、自分がそんな朦朧とした状態で演奏していたものだから、初期の頃の共演者のことというのをあまり覚えていなかったりする。(共演者だけではないか。全体的に自分が存在しているという実感が薄く、他人に自分が見えている感覚が乏しかったかもしれない。)
ICHIさんと初めて出会った時のエピソードといえば、ゆるキャラについて話したことくらい。くまモンがまだブレイクしていなかった頃に、「これはキャラとして完成しすぎているのでゆるキャラではない」だの、「これからはおかざえもんがくる」だの、覚えているのは演奏とは全く関係のないそんな話だ。
ICHIさんと再会...というか、より日常的に存在を認知することになったのは烏丸丸太町のライブハウスSLOW HAND、喫茶てふてふをとりまくお店の方・ミュージシャンの方々とのつながりだった。私はなぜか「烏丸丸太町の壇蜜」という謎の異名をつけられ、(音楽に関わる場が唯一自分に女であることを許していたようなところがあったので逆に自分がそんなに媚を売っているように見えるのかと少々不安になったが)自分の存在をなんらかの形でイジってもらえたことによって、自分の居場所を与えられたような安心感を感じたものだ。
ICHIさんは、私なんかのなよっちいものではなく、相当波乱万丈な人生だったのだろう、と歌を聴いているだけでも伝わってくる塊がある。暗い、という言葉でひとまとめにすることに抵抗があるが、ICHIさんの音楽は日常の煩わしい喧騒から身を隠す闇の持つ優しさが充満しており、重い中にもなぜが安心感を覚えてしまうミュージシャンだ。だから今回ツーマンのお話をいただいた時にとても嬉しかった。
私が休業宣言をしてしまったばっかりに、ツーマンをラストブッキングライブと重ねてしまって申し訳なかったが、いまの私にできることをしたいと思う。
私も随分元気になった。体が動くというのは、感情が動くというのは本当にありがたい。
だからといって心の底の薄暗い部分が消えたわけではないし、消そうとしてはいけないのだと思う。
それはすでに私の性格の一部になっているだろうし、人の痛みに対する想像力を得るためには今の自分に不可欠なものである。
ただ、やはりこのままのかたちで音楽を続けていくにも限界を感じる。過去の自分に負けている気がする。
残る部分もあるだろうが、今回のこの休止により、いまの自分に合った形を模索していきたいと思っている。
明日のライブ、ぜひ来てくださいという文章にする予定だったのだが、
台風がなんというタイミングか、直撃しそうな予報が出ている。
無理はしないでください。
でも来ていただけたらとても嬉しい。
よろしくお願いします。
7月28日(土)
京都烏丸丸太町SLOW HAND
ICHI・フジコツーマンライブ
19時オープン、19時半スタート
チャージ1500円+オーダー
昨日はお疲れ様でした。ガラクタはもちろん、陰日向も聴けてとても感動しました。ボクが効かさて頂いたフジコさんのライブの中で、一番リラックスされていたように感じました。(最初、ちょっと音のトラブルはありましたが)
返信削除台風が来ていたこともあり、ライブ後あまりお話し出来ませんでしたが、いずれまたお会い出来るのを楽しみにしています。 ICHI
ICHIさん!
返信削除こんな告知なしのブログにコメントありがとうございます!
昨日は本当にありがとうございました。
ICHIさん今回のライブは遍歴(?)自分の内にあるものを発散するところから外の方に目を向けていかれる過程、歴史を垣間見たような気がしました。
確かに私、今回わりとリラックスしていたと思います。
しかし緊張感とリラックスのバランス難し、です。
リラックスからさらに次の「伝える」「心に刺す」というステージに進みたいです。
ちなみにかげひなたは「陰陽」とかきます。
またすぐにお会いできると思います。レコーディングも宜しくお願いします。
フジコ